ドキュメント
K112E
Digital Compound Oscillator
概要

K112E は、独自の「アイランド・シンセシス」理念に基づいて開発された、デジタル複合発振器モジュールです。以下の特徴を備えています:
「アイランド・シンセシス」は、我が国独自の電子音響芸術の伝統を現代に受け継ぎ、さらに発展させようとする思想です。 1960 年代から 1980 年代にかけて、欧米のシンセサイザーの歴史は「西海岸」と「東海岸」という二つの潮流として語られてきました。しかし、同時期の日本には、独自の探求を行う複数の先駆者たちが存在していました。彼らは、欧米の模倣ではない、独自の回路設計や音響合成手法を開発し、独特の音色を持つ楽器を生み出してきました。 現代のシンセサイザー市場では、グローバル化の影響により設計思想や音作りの手法が画一化する傾向にあります。しかし私たちは、かつての日本の電子音響機器が持っていた独創性―その技術的特徴、美意識、そして思想を再評価し、現代の技術で再解釈することを目指しています。 K112E は、このような「アイランド・シンセシス」の理念に基づいて開発された、デジタル複合発振器モジュールです。以下の特徴を備えています:
- 甲乙丙の三種発振器による重層的な音響構成
- 日本の電子楽器の伝統を継承した独自の波形合成アルゴリズム
- 現代的なデジタル技術による古典的な音響合成理論の再構築
- 伝統と革新が融合した操作体系
- urorack 規格に準拠しながらも独自の個性を保持
K102E からの改良点
K112E は、初代 K102E に寄せられたユーザーフィードバックをもとに再設計した改良版です。K102E の基本構造とサウンドを受け継ぎつつ、電圧制御とスイッチを大幅に拡張し、モジュラー環境での自由度を高めました。
追加された CV 入力
- OSC A BANK CV:OSC A の波形ファミリーを選択
- OSC B BANK CV:OSC B の波形ファミリーを選択
- HARMONICS CV:A/B 両方の FORM 量をまとめて制御
- COMPOUND ALPHA CV:FADE のミックス量、PHASE/MULT の作用量
- LFO DEPTH CV
- LFO FORM CV:7 波形の選択
- LFO SPEED CV
追加されたスイッチ
- COMPOUND MODE:FADE / PHASE / MULT
- LFO FOR:OSC 1+2 / OSC 2 / pitch off
- LFO to ALPHA:LFO を Compound Alpha へ送る独立 ON/OFF
- SYNC DIR:SYNC 時のマスター OSC を反転
- OCTAVE
K102E から継続する DETUNE と SYNC も搭載しています。DETUNE は OSC B を OSC A 基準へ切り替えます。
各部名称

| No. | 名称 | 機能 |
|---|---|---|
| 1 | 音高信号 | 音高 CV 入力(V/Oct, 0-5V) |
| 2 | 甲波形索引 | OSC A の波形バンク選択 CV(0-10V) |
| 3 | 乙波形索引 | OSC B の波形バンク選択 CV(0-10V) |
| 4 | 倍音操作 | A/B の FORM(倍音)量をまとめて制御する CV(0-10V) |
| 5 | 丙速度 | LFO スピード CV(0-10V) |
| 6 | 丙深量 | LFO デプス CV(0-10V) |
| 7 | 合成量 | Compound Alpha CV(0-10V) |
| 8 | 出力 | オーディオ出力(±5Vpp) |
| 9 | 波形索引(甲) | OSC A の波形バンク/読み出し位置 |
| 10 | 倍音(甲) | OSC A の倍音(FORM)量 |
| 11 | 周波数調整(甲) | OSC A の周波数 |
| 12 | 波形索引(乙) | OSC B の波形バンク/読み出し位置 |
| 13 | 倍音(乙) | OSC B の倍音(FORM)量 |
| 14 | 周波数調整(乙) | OSC B の周波数 |
| 15 | LFO 送り先 | LFO の送り先(音高 / 乙 / α) |
| 16 | LFO レンジ | LFO の速度域(同期 / 高速 / 低速) |
| 17 | 波形(丙) | LFO 波形の選択 |
| 18 | 速度(丙) | LFO スピード(急〜遅) |
| 19 | 變調量(丙) | LFO デプス(深〜淺) |
| 20 | 方式 | Compound モード(FADE / PHASE / MULT) |
| 21 | 同期 | SYNC(入 / 切) |
| 22 | α合成量 | Compound Alpha 量(淺〜深) |
| 23 | オクターブ | OCTAVE(低 / 高) |
| 24 | 甲乙音高同調 | DETUNE(切 / 入) |
| 25 | 同期方向 | SYNC DIRECTION(甲 / 乙) |
主要機能
甲種(プライマリー)発振器
- ピッチ調整(±2 オクターブ)
- 8 種類の波形バンクを搭載
- 基本波形(鋸波、矩形波、三角波、正弦波)
- 金属倍音
- フォルマント(声)波形
- 線形フィードバックノイズ
- カオス倍音
- 16 段階の倍音選択機能
- ウェーブテーブル読み出し位置の精密コントロール
乙種(セカンダリー)発振器
- ピッチ調整(甲種に対して ±1 オクターブ)
- 甲種と同様の波形バンク搭載
- ウェーブテーブル読み出し位置コントロール
- 甲種発振器とのハードシンク機能
丙種(LFO)セクション
- レート:0.005Hz から 50Hz
- デプスコントロール
- 4 種類の波形選択
- スクエア
- トライアングル
- ランプ(上昇/下降)
- ランダムステップ
- 複数のモジュレーション・デスティネーション選択
仕様
基本情報
- 品番: K112E
- 製品名: K112E Digital Compound Oscillator
物理仕様
- パネル幅: 20HP
- 奥行: 20mm
- パネルカラー: ブラック
電気仕様
- 電源: DC ±12V(16ピン Eurorack規格、5V系統無使用)
- 消費電流:
- +12V: 300mA(理論値)
- -12V: 10mA(理論値)
入出力仕様
- アウトプット: 3.5mm モノラルジャック(±5Vpp)
- ピッチ CV 入力: 3.5mm モノラルジャック(V/Oct, 0-5V)
- その他すべての CV 入力: 3.5mm モノラルジャック(0-10V)
- OSC A BANK / OSC B BANK / HARMONICS / COMPOUND ALPHA / LFO DEPTH / LFO FORM / LFO SPEED
ウェーブテーブルと合成
波形バンク
- 線形フィードバックノイズ:ノイズジェネレーター
- パルス幅変調:可変デューティー矩形波
- フォルマント波形:音声的な倍音構造
- カオス倍音:非線形な倍音成分
- 金属倍音:金属的な倍音構造
- 基本波形:
- サイン波
- トライアングル波
- スクエア波
- ソートゥース波
合成方式
Ø Phase Modulation (PM)
$y(t) = x1(t + \alpha x2(t))$
- プライマリー波形の位相をセカンダリーで変調
- アルファパラメーターで変調量を制御
- 独特な倍音構造による新しい音色生成
⊗ Multiply Modulation (RM)
$y(t) = (1-\alpha)x1(t) + \alpha(x1(t) \cdot x2(t))$
- プライマリーとセカンダリーの乗算合成
- アルファパラメーターで原音とリング変調音のバランスを制御
- 新しい倍音列による金属的な音色
⊕ Cross-fade
$y(t) = (1-\alpha)x1(t) + \alpha x2(t)$
- プライマリーからセカンダリーへのスムーズな遷移
- アルファパラメーターでクロスフェード量を制御
- 2 つの波形間の滑らかなモーフィング
接続と基本操作
設置手順
- ユーロラック電源が切断されていることを確認
- バスケーブルの方向を確認
- モジュールを設置し、固定ネジで確実に固定
基本操作
- 初期起動時は出力レベルを最小に設定
- 各発振器のピッチを調整
- 希望する波形を選択
- 合成方式を選択し、アルファパラメーターで調整
- 必要に応じて LFO でモジュレーションを追加
注意事項
- 背面ネジ・ナットの確認: 製品の構造上、背面のネジ・ナットが緩みやすくなっています。ラックマウントの前に、ナットが緩んでいないか必ずご確認のうえ取り付けてください。万一、部品の欠品・欠損があった場合はお問い合わせください。
- 電源投入/切断時は必ず出力レベルを最小にすること
- CV 入力端子には規定電圧範囲内の信号を入力すること
- 過大入力による損傷を防ぐため、接続は慎重に行うこと
- 適切な通気が確保された環境で使用すること